嘘

「自分は元国際モデルで、2,000万円の貯金がある」

これは、原田亜矢（仮名）当時24歳が携帯電話の出会い系サイトで知り合った、辻村正春（仮名）に吐いていた嘘である。それを信じたがために正春は自分の姉を殺されることになった。

亜矢は、とても元国際モデルには見えない、太り気味の体型。だが、ホテル代などのデート代はすべて彼女が支払った。では、その金はどうしていたのか？　それ以前に出会い系サイトで知り合った、安武太郎（仮名）当時32歳から巻き上げていたのだ。

「自分は山〇組五代目組長の娘」

それが亜矢が太郎に吐き続けていた。嘘だった。

亜矢と太郎

2人が知り合ったのも、やはり携帯電話の出会い系サイト。
2001年8月のことだった。太郎は和歌山市内で自動車整備士として大手自動車メーカーに勤務していた。
その年の3月に結婚して8月に別れたばかりだった。

亜矢は18歳で結婚して、この出会いの前年に離婚している。
2人の子どもがあり、亜矢が引き取っていた。
亜矢は子どもを託児所や両親や前夫に預けては太郎とのデートを重ねる。

亜矢の嘘はとても幼稚なものだった。
「太郎の子どもを身ごもった」
「太郎の元妻から暴行を受けて、流産した」
「元妻がヤクザを雇って嫌がらせをしてくる」...
あまりにも荒唐無稽な嘘だが亜矢は元妻になりすました脅迫メールを太郎に送るなどして、信じ込ませてしまう。

ヤクザによる嫌がらせをやめさせるめ、太郎は山〇組に登録しなければならないとして、「登録料」を。
そして、やっぱり暴力団は嫌だからと「組を抜けるための金」など、合計85万円を、亜矢は太郎からむしり取った。

2001年12月
亜矢との京都旅行のため、会社を無断欠勤した太郎は、解雇されてしまう。
収入のなくなった太郎は亜矢と一緒に元勤務先や知り合いの社長宅に侵入して窃盗を試みたが、たいした成果は上がらなかった。

組長の娘が、こんなつまらない窃盗などするだろうか？

2人はナンバープレートを盗んだのが発覚して逮捕される。

平成14年3月1日
太郎に懲役1年6カ月、亜矢に懲役1年の有罪判決が下った。
ただし、2人とも3年間の執行猶予が付き、釈放される。

金の要求

その後、太郎が自動車用品店に就職すると「月20万円を8カ月間支払えば、組長が結婚を認めてくれる」と言って、亜矢は金をだまし取った。
さらに「交通事故を起こした」「組員の香典」などと言っては亜矢の金の要求はとどまらない。

その頃に亜矢が知り合ったのが、辻村正春であった。
デート代を自分が出すくらい、亜矢は正春に惚れていた。亜矢は正春のことを、太郎に隠さなかった。
会っているところを見せつけ、「月20万円を払わなければ、組長が無理矢理、正春と結婚させると言っている」と、金をむしり取る材料にした。

正春の姉

正春の姉の京子（仮名）は、弟の女友達とすぐに仲良くなる性格だった。
正春と亜矢が電話で話していると京子が変わりたがり京子が亜矢と話す。
正春と亜矢と京子は、一緒に遊びに行くようになった。

亜矢は携帯電話を複数持ち別の人間になりすますことがあった。
おネェ言葉のヤクザだが、気が優しいという、「小鉄」という人物を作り上げ、正春に電話した。
「小鉄」は「亜矢を大事にしろ」などと言い、相手をコントロールしていった。
正春は「小鉄」が亜矢であることに、まったく気がつかない。

そして姉の京子が小鉄と話したがった。
亜矢が演じる小鉄はどんなことを言えば女性が喜ぶか分かっている。
何度も話しているうちに、京子は小鉄のことが好きになってしまった。

そして亜矢は太郎を小鉄になりすまさせて京子とデートさせて太郎に京子を殺害させて金を奪うことを考える。

「友達が正春に強姦されて子どもが産めなくなり、婚約者に捨てられて自殺した。
仇を討つために自分が正春を殺して金を奪うから、あんたは京子を殺して金を奪ってくれ」

こんな話を太郎は請け負ってしまう。もちろん亜矢が正春を殺すというのは、嘘だ。

恐怖のドライブ

平成14年7月7日
小鉄になりすました太郎が京子を車に乗せ、和歌山県海南市の夜景スポットをドライブする。
しだいに京子は不審に思い始める。電話で話していた小鉄は饒舌だったのに今日はあまりにも無口だからだ。
本当に小鉄なのか？　「免許証を見せて」と京子は言った。

やるしかないと太郎は思った。「免許証を見せるから目をつむって」と言うと、隠し持っていたスタンガンを京子の首に押し当ててスイッチを入れる。
いったんは気を失った京子だが意識を取り戻して外に逃げようとする。

太郎は京子を引き戻して首を絞め続けて殺害した。
遺体は高野山の山中でガソリンをかけて12時間かけて焼却された。
10万円は奪えるであろうと考えていた亜矢だが京子の所持金は3万5000円だった。
ガソリン代を引いて3万円を太郎は亜矢に渡した。

亜矢は、いまだに小鉄の存在を信じていた正春に京子は小鉄と駆け落ちしたと信じ込ませて捜索をさせないようにした。

亜矢は太郎にまた、組長の存在をちらつかせて、次の犯罪を持ちかけた。

逮捕

7月13日
太郎は亜矢に言われるままに、すでに退職した自動車用品店の店長を店の駐車場でサバイバルナイフで突き刺した。
血を迸らせながら店長は自分の車に逃げ込んでドアロックすると携帯電話で110番した。

太郎は2日間逃走を続けたが京都府内で職務質問を受けて強盗殺人未遂容疑で逮捕された。br> 8月26日br> 亜矢も逮捕される。

判決

一審の和歌山地裁での2人への判決は無期懲役。

「矯正は不可能。死刑以外ありえない」

と主張し、検察が控訴した。
控訴審の大阪高裁で那須彰裁判長は
「動機は短絡的、残忍な犯行で、死刑選択も考慮に値するが、反省しており、極刑がやむを得ない場合にはあたらない」
「遺族に反省の手紙を出すなど、矯正の可能性はある」
とし、一審の無期懲役を支持した。

安武太郎は上告せず、2004年3月22日、無期懲役が確定する。

亜矢は上告し2005年12月12日、棄却され、無期懲役が確定した。

映画化

和歌山出会い系サイト強盗殺傷事件映画化決定 出会い系サイトを利用し男を騙して、さらにお金のために殺害まで犯した男女の事件が映画になります。 出会い系サイトでのトラブル事件ではなくて、事件の詳細は記事の内容通りで1人の女の狂気が起こした事件でした。悪魔のような女に関わってしまった全ての人が不憫でならないです。 この事件を元にした映画のタイトルは「愛の病」です。

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